注目すべき新しい組織形態「ティール」とは?
社員を管理するマネージャーがいて、そのマネージャーを管理する上司がいて・・・
ピラミッド型組織運営に疑問を感じたら
8年前に登場した今までにない組織運営の形である「ティール」について勉強してみませんか?
目次
ティール組織とは
2014年に出版されたフレデリック・ラルー氏の著書の中で触れられています。
本の内容について、VISIONS掲載のこちらの記事がわかりやすく紹介されています。
ここでマフィアは「オオカミの群れ」、警察は「軍隊」、グローバル企業は「機械」、さらに進化した「家族」の組織体。そして「これまでの組織になかった次世代のくくり」が【ティール組織】と表されています。
つまり「ティール組織」とは、今までの組織運営方法に当てはまらないやり方を採用している企業というのが定義です。
事例として、ハーバードビジネスレビューの記事で紹介されているThe Morning Star Companyがあります。
アメリカのトマト加工会社
The Morning Star Companyとは1970年にトラック輸送会社としてアメリカで設立された企業です。
今は食品加工および農業ビジネスを手掛ける企業として成功しており、主にトマト加工品を製造しています。
トマトペーストとダイストマトの分野ではアメリカ国内のマーケットシェア40%を占めています。
自社のトマト農場もあり、なんと世界のトマト総生産量の約10%がThe Morning Starの農場で栽培されています。
この企業が注目される理由は約550名の社員と2500人の期間従業員で構成されている企業であるのにもかかわらず、役職もなければ昇進もないからです。
社員の管理方法
役職がないということは社員の管理方法がどうなっているのか疑問に感じると思います。
ティール組織においては自己管理になります。
従業員全員が会社の事業を進化させるためにはどうしたらよいかを自分の立場から考え、問題を定義し、最終的な個人目標を同僚とのミーティングを通して「役割」として定めます。
具体的には、より効率よく、より環境に配慮しながらトマトジュースを搾ることができる方法を追求するという目標を掲げる従業員がいるとします。
あらゆる可能性を探ってこの目標を達成するのがその人の仕事となるので、そのために新たな知識を学んだり訓練を受けたりする努力を自分でしなければなりません。
比喩的な表現になりますが、立てた目標がその人の絶対的なボスになるということです。
評価方法
この会社では、全ての情報がオープンにされています。
今、何が問題で何が必要かを把握することができるので、従業員は建設的な目標を立てることができます。
目標が達成できたかどうかは、年度末にその人の働きに影響を受けている全ての従業員とミーティングして評価、決定されます。
新人の教育方法
新入社員はセルフマネージメントについての研修やセミナーを受け、自由と責任の関係について学びます。
会社に入りたての従業員はよりベーシックな目標を、経験値の高い従業員はより複雑で、高度な知識とスキルが必要な目標を設定することになっています。
責任の所在について
いわゆる一般的な会社組織で、部下が顧客に迷惑をかけたとしたら上司が責任を取るのが普通だと思います。
しかし、その上司がいないとしたら自分の失敗は自分で何とかしなければならないということになります。
ここで自由と責任について学んだことが生きてくるというわけです。
驚いたのは、微生物学について深い造詣のある人達が実際に作業員として商品を容器に無菌充填しているんだそうです!
一見、単純作業にみえる仕事も人任せにせず、最初から最後まで自分たちの責任において完了させるというマインドの好例です。
ティール組織のメリット
慣れるとメリットがたくさんあります。
組織全体としては、昇進システム自体がないので社内政治がそもそも発生しません。
つまり、足を引っ張ろうとする人もいなければ、誰かに媚びる必要も全くないのです。
したがって仕事の質を上げることに集中することができます。
結果として、業務が効率よく回り社内外の信頼が高まります。
個人スキルの向上
全部自分で実行してその結果の責任は自分で取らなければならないので、否応なしに幅広いスキルを身に付けることができます。
例えば、従業員の半分は仕入先との交渉方法を身に付けており、多くの従業員が財務分析の訓練を受けています。
人事について
組織全体としては23のユニットに分けられていますが、雇用についても権限は各ユニットに付与されています。
現場の従業員の仕事がまわらないのは人材不足のためだと特定することができれば、いつでも人を採用することができるようになっています。
給料について
同僚との話し合いによって決定されます。
普通の企業では役職に応じて報酬のレベルが異なることが多いですが、そもそも役職がないので個別に決める必要があるのです。
年度末になると、従業員によって選定されたメンバーとの話し合いが開催され、目標の達成度合いや貢献度などを振り返り、仲間のためにどれだけ貢献したかで報酬の内容が確定されます。
ティール組織のデメリット
第1に、ピラミッド型の組織で働いた経験があるとセルマネージメントの働き方を理解するのは難しく、馴染むのに平均1年以上かかるということです。
求職者は自己管理について2時間におよぶ入門コースを受講しなければならず、さらに10人以上の従業員と面談します。
期間従業員の場合ではありますが、そうやって慎重に採用しても半数は馴染めずに2年以内に退職してしまうようです。
昇進がないので自分の成長度合いを測るのが難しいのもデメリットといえるでしょう。
またモチベーションに関連していえるのが、怠け者がいた場合、注意すべきマネージャーがいないので当事者同士で解決する必要があります。
ティール組織を真似するのはハードルが高いのか
経営者、従業員含めてかなり大胆な意識改革が必要となります。
ティール組織の運営方法がどの企業にとっても最適ということではありません。
しかし一方で、ティール企業のエッセンスの一部分だけでも取り入れることができれば何かが改善される可能性もあります。
ティール組織から学べること
もし自分の会社がティール組織だったら?
例えば、組織に所属するデザイナーはもっと売り上げを意識するようになるでしょう。
次の顧客獲得のためにSNSをもっと積極的に使ってプロジェクトを発信しようとするかもしれません。
営業的、広報的な業務にも貢献しようとするでしょう。
全体のことを把握しておかないと、自分の仕事のどこを改善すべきかわからないので目標を立てることができません。
営業や広報活動のやり方にも詳しくなければ、他部署の業務に貢献することは難しいでしょう。
貢献できなければ他の従業員に評価してもらえません。
企業全体のことを意識する必要があります。
情報の共有化
ティール組織ではあらかじめ従業員は財務状況や報酬などあらゆる情報にアクセスできる仕組みになっています。
通常の組織運営の方法をとる企業では、必ずしも情報共有が構成されているとは限りません。
しかしながら見習えるところはあるでしょう。
他の部署のメンバーと積極的に情報交換をしたり、やってることを知ろうとすることは生産性や仕事の質を高めるうえで重要です。
エイミー・エドモンソン博士の実験から
コミュニケーションの重要性
ティール企業では個人のタスクが明確なのでリモートワークも可能です。
したがってオフィスは作業をする場所というより、コミュニケーションをとる場所にする必要があります。
ティール組織に最適なオフィスとは
事例で取り上げたThe morning star companyについては農園と工場が主な仕事場なので、オフィスのあり方としてはあまり参考にはならないでしょう。
そこで参考として、株式会社ネットプロテクションホールディングスをご紹介します。
Talknote Magazineなど様々な媒体で日本のティール組織として紹介されていて、「働くというより話そう」がコンセプトのオフィスです。
オープンスペースの確保
コミュニケーションを重視するとやはりオープンな空間になります。
会議室というよりはカフェスペース、個々のデスクが並んでいるというよりはビックテーブルで仕事をするのが理想的といえるでしょう。
もちろん、その企業の働き方にあった空間や機能の設け方をオーダーメードする必要があります。
個人の作業に集中できるスペースを設けつつも、情報共有を促すようなオフィス作りが必要です。
まとめ
コミュニケーションがティール組織運営においての鍵となるということを鑑みれば、最適なオフィスデザインとは、コミュニケーションが取りやすいオフィスということになります。
シンボリックなカフェスペースを設け人の集まる仕組みをオフィスに取り入れ、目的を特定しない広々とした空間に自由に動かすことのできる可動式の家具を配置することも情報共有を促すのに効果的です。
コミュニケーションは移り変わりが激しい現代のビジネス環境においても、情報を素早く処理する必要性に迫られている他の運営形態の組織にも必要不可欠です。
しかしながらティール組織に最適なオフィスをそのまま取り入れるのではなく、そこから見習えることを徐々にオフィスに反映していくのが現実的でしょう。
その企業の組織運営方法に配慮しながら、適切な情報共有を促す仕組みを見つけることが、今後のオフィス作りにおいて重要になります。