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ニューノーマルな働き方とは?これからの企業やオフィスのあり方

ニューノーマルな働き方とは?これからの企業やオフィスのあり方

パンデミック以降、ニューノーマルという言葉を頻繁に耳にするようになりました。
働き方を変更せざるを得なくなった時期を経て、企業はそれぞれの働き方を見出しつつあります。
働き方におけるニューノーマルとは一体何なのか、そしてニューノーマルは定着するのか。
一緒に探ってみましょう。

ニューノーマルな働き方とは

2020年春、緊急事態宣言が発令されると、多くの企業が出社制限や在宅勤務導入を余儀なくされました。
その後、多くのメディアで「ニューノーマルな働き方」や「ニューノーマル時代の働き方」といった言葉が使用されるようになりました。
ニューノーマルとはNew(新しいこと)とNormal(正常、標準的)を組み合わせた造語で、新しい生活様式としては外出時のマスク着用やソーシャルディスタンス確保が挙げられます。
働き方におけるニューノーマルとは、毎日会社に出社していた従来の働き方のスタイルに対して、リモートワークが浸透し在宅勤務が新しい日常として定着した状態を指しています。

2021年12月現在、ワクチン接種が進んだことで状況が一旦落ち着きを見せるなか、在宅勤務に代表される新しい日常は果たして働き方として定着したのでしょうか。

コロナで起こった働き方の変化

パンデミックによって具体的にどのように働き方が変わったのか統計を見てみましょう。
国土交通省が就業者4万人を対象に行った令和2年度のテレワーク人口実態調査結果によると、パンデミック前には10%に満たなかったテレワーカーの割合は緊急事態宣言の影響もあり2020年には19.7%に達しており、2倍以上の増加となりました。

国土交通省 Press Release 令和3年3月19日

しかし、緊急事態宣言下において出社率7割削減、言い換えれば7割在宅勤務を目標にしていたにも関わらず、全国的に見れば2割しか在宅勤務していなかったことがわかります。
大都市圏の企業に勤務している人にとっては、実感しているよりもかなり低い数字かもしれません。
なぜこのようなギャップが起こるのかは地域別の統計を見るとわかります。

国土交通省 Press Release 令和3年3月19日

テレワーク実施率を地域別に表したグラフです。
2020年4月、5月の1回目の緊急事態宣言の際はテレワーク実施率が首都圏では30%以上にまで上昇している一方、地方都市圏では約13%に留まっています。
その後は各エリアで低下しており、特に8月から10月の期間に地方都市圏では元の状態に迫る勢いで減少しています。

テレワーク実施率調査結果 9月の調査結果 東京都 産業労働局

対象を東京のみに絞ると、2020年4月時点で62.7%、1年後の2021年4月には56.6%と若干低下した後、8月の4回目の緊急事態宣言化では65%に達し高い水準で在宅勤務が定着していることがわかります。
東京では他の地域と異なり、テレワークがニューノーマルとして定着していたといえそうです。

大都市圏では在宅勤務やサテライトオフィス勤務などリモートワークが普及しているという印象がある一方で、全国的に見るとリモートワークは一般化されていないという結果になりました。
テレワークはごく一部の間でのみ普及しており、ニューノーマルとは言い難い状況です。

早急に求められる働く環境の整備

・リモートワークの導入

前項の統計から、地方と大都市圏のリモートワーク実施率には明らかなギャップがあることがわかりました。
さらに、雇用形態や企業規模によってもテレワーク実施には格差が生まれているようです。

パーソル総合研究所 「第五回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」

パーソル総合研究所が実施している調査の最新版(2021年8月リリース)によると、非正規雇用者のテレワーク実施率は正規雇用者よりも10%低いことがわかりました。
公務員・団体職員ではさらに低い実施率となっています。

パーソル総合研究所 「第五回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」

また企業規模での比較では、大企業ほどテレワーク実施率が高く、10000人以上の企業と100人未満の企業では実施率に約3倍もの差があることが明らかになっています。
これは大企業が集中する大都市圏でテレワークが普及している要因と言えるでしょう。

パーソル総合研究所 「第五回・新型コロナウィルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」

同調査において、調査開始直後からテレワークを行っていない理由として「テレワークで行える業務ではない」が最も多く、最新データでは47%以上を占めています。
パンデミック前より増加傾向にあるのは、実際に在宅で仕事をしてみたところ、自分の仕事がテレワークできる業態でないことに初めて気が付いたワーカーが一定の割合で存在したからかもしれません。

続いて「テレワークの制度が整備されていない」や「テレワークのためのICT環境が整備されていない」という理由を挙げる割合は減少傾向ではありますが、テレワークの普及を阻む大きな原因となっています。

「テレワーク制度が整備されていない」という意見が30%を超えている背景には、書類をデジタル化したりハンコを廃止したりする物理的な対策では解決できない問題が山積みしているからだと考えられます。

例えば、在宅ワークだと働き過ぎてしまうという事例が多く報告されています。
このような働き過ぎを防止するような勤怠管理システムを、全ての企業がきちんと構築できているわけではありません。
また、評価制度が整っていない場合、自分が正当に評価されているのか不安に感じる従業員もいるようです。

ニューノーマルに合わせた仕組みの確立や制度の見直しが必要であり、テレワーク格差解消のためには引き続きテレワークしやすい環境を作ることが重要です。

リモートワークにおけるコミュニケーション問題

テレワーク制度が整備されていないと感じる背景には、テレワークによって生じるコミュニケーションの問題があります。
対面でのコミュニケーションの機会が限られるなか、上司は部下の動きが把握しづらく、部下は自分がどのように評価されるのか不安だといった声をよく耳にします。

リモートワークでは空間を共有できないため、場の空気を読んで行動したりすることは不可能です。
スムーズなリモートワークを実現させるには、仕事の分担、役割や責任の所在をあらかじめ明確にしておく必要がありますが、メンバーシップ型の働き方を長い間採用してきた日本企業は、ジョブ型の働き方に移行することを苦手としています。

こうした企業は緊急事態宣言中の在宅ワークを何とか乗り越えてきましたが、出社する以外にスムーズなコミュニケーションの手段や方法、仕事の進め方を見つけることができず、パンデミック以前の状態に戻ってしまう傾向にあります。
実際にリモートワークでは業務効率が低下するといった調査結果も出ており、オフィスに出社するほうが合っているという企業や従業員は多いのかもしれません。

テレワークをさらに普及させるには、出社時と変わらないコミュニケーションの質を保つために、コミュニケーションの頻度や手法を見直す、もしくは働く制度そのものを変える必要があります。

・ITインフラ

在宅で働く場合ネットワークのインフラ整備は欠かせません。
しかし、自宅にしっかりとしたネットワーク環境が整っていないというワーカーも多いのではないでしょうか。

顧客とのオンラインミーティング中にネットワークが途切れるなど不便さを感じ、快適なネットワーク環境を求めて結局は出社することを選択するワーカーも増えています。
緊急事態宣言中は在宅勤務の急増で国内のネットワークトラフィック自体がひっ迫する事態となりました。

政府や東京都などは中小企業に在宅ワークの環境を整えるための助成金などを設けていましたが、リモートワークを定着させるには通信インフラの整備など、国レベルでの対応が必要といえるでしょう。

ニューノーマルなオフィスのあり方

在宅勤務やリモートワークを定着させることに成功した企業の中には、パンデミック以前とは異なる働き方を導入したり、新しい機能をオフィスに追加することで働く環境をよりよくしていこうという動きもみられます。

慣例にとらわれることなく従業員が効率よく働けるような制度を設けたり、オフィスを単なる作業をする場ではなく対面でのコミュニケーションをする場として位置づけ、コミュニケーションスペースを充実させる企業が増えています。

・場所や時間にとらわれない働き方

在宅ワークを推奨しつつも、インフラの問題や家庭の事情から在宅ワークが難しい従業員向けに、サテライトオフィスを新たに設ける企業が増えています。

例えば生命保険大手の第一生命は、2019年以降サテライトオフィスを拡大する取り組みをしています。
一人一人の異なるワークライフバランスを尊重した働き方を後押し、その結果従業員は家族と過ごす時間を確保することができるようになったという事例も上がっています。

サテライトオフィスの開設方法も多様化しています。主流なのは自社で独自にサテライトオフィスを設ける方法と、既存のシェアオフィスと契約しサテライトオフィスとして活用する方法です。
いずれにしても、サテライトオフィスを従業員の多く住むエリアを中心に、そしてアクセスしやすい場所に設けることで、効率のよい働き方を実現することができます。

オフィスが密になることを防止するために、時差出勤やフレックス制を導入している企業もあります。
通勤時間に幅が出ることで、通勤ラッシュやそれに伴うストレスの軽減につながるとし、コロナ後も続けて欲しいという声も多いようです。

働く場所や時間を固定するのではなく、効率のよさを重視することによって従業員のモチベーションが向上し、生産性の高い働き方を促進することができます。

・オフィスの衛生管理

多くの企業がエントランスに消毒液や検温器を設置するなど、オフィスにおける衛生管理への意識は一見高まっているようにみえます。
しかし、コロナ後にどのようにオフィスの衛生管理をするべきか考えると、衛生設備やデスクの配置といった物理的な面だけではなく、従業員の心理面へのアプローチも重要です。

パンデミック前には、発熱しているのにもかかわらず無理やり出社することが美徳とされていたことさえありました。
休みたくても休みますと言えないプレッシャーを従業員が感じてしまうオフィスの環境は、感染症を防止するためにはもちろんのこと、精神衛生の観点および業務効率向上のためにも改善する必要があります。

無理を押して出社した従業員が単なる風邪であったとしても、熱があれば作業効率は劣るうえミスをする可能性も高まります。
客観的に見れば、しっかり休んで早く治したほうが合理的です。

自然災害などで電車が遅延運休しているにもかかわらず、出社に執着していたことも思い出されます。
業務の効率や、従業員の安全を確保するのであれば出社することを重要視する必要はないはずです。

パンデミック後は従来からあったこうしたメンタリティは捨てて、学んだことを働き方に生かすべきでしょう。
衛生的なオフィス環境を整えるためには、従業員が心理的にも働きやすい環境を構築する必要があります。

・企業はオフィスをどのように運営すればいいのか

Dell Technologies BLOG デル・テクノロジーズ、中小企業のテレワーク導入状況とニューノーマル時代の働き方に関する意識調査結果の続編を発表

デル・テクノロジーズが2021年8月に中小企業を対象に実施した意識調査によると、パンデミック終息後は以前のような勤務体制に戻るだろうと予測した回答者が半数以上に達しています。
やはりテレワークはコロナ禍における一時的な対処法であり、ニューノーマルな働き方は定着しないとの見方が根強いことがわかります。

CNET Japan コロナ後を見据えた柔軟な働き方の実現に向けて レノボがテレワークガイド冊子を公開

その背景には日本人特有の働き方が関係しているかもしれません。
レノボ・ジャパン合同会社が2020年に実施した調査において、日本では「在宅勤務での生産性は、オフィスよりも下がる」と答えた回答者の割合が諸外国と比較して高いことが示されています。

在宅勤務にもどかしさを感じる原因の1つとして、メンバーシップ型の働き方が挙げられます。
メンバーシップ型の働き方では、場の雰囲気や顔の表情など、言葉以外で交わされる情報が重視される傾向にあります。
したがって、物理的な空間の共有をしながら実際に会ってコミュニケーションができないと成り立たない働き方だといえます。

一方、諸外国ではジョブ型の働き方が主流であり、言葉や書面で交わされたことが全てという前提で仕事が進められます。
個人がやらなければならないタスクが明確に決まっており、責任の所在が明らかなのが特徴です。
周りの状況をあまり気にする必要はなく、決められたタスクに専念することが尊重される働き方です。
在宅勤務だと誰にも邪魔されず効率よく業務に集中することができるので、生産性が上がったと感じられるのもうなずけます。

パンデミック後にメンバーシップ型の働き方のメリットを生かしながらも、在宅ワークを中心としたリモートワークを推奨していく方針をとった場合、オフィスにはコミュニケーションを促進するための機能がもっと必要になります。

出社中心の働き方に戻したとしても、今後も今回のようなパンデミックや自然災害などによりリモートワークを余儀なくされることがあるかもしれません。
そのような場合に対応できるようにオフィスの環境や働き方を整えておくことは事業を存続するため、社員を守るうえで重要です。

テレワークを通じてコミュニケーションの重要性を再認識した今、オフィスを単なる「事務所」ではなく対話や交流をする場として運用する動きは加速しています。

例えば、サッポロ不動産開発株式会社のオフィスの半分は関連企業、顧客、従業員が一緒に働けるスペースとなっています。
従業員以外も利用することができるオープンエリアと、従業員のみ利用することができるクローズエリアの間に壁は設けられておらず開放的なオフィスとなっています。

オープンエリアにはビールサーバーが設置されており、夜になるとビールを楽しむことができます。
日本のビジネスシーンならではの「飲みニケーション」の場として活用されており、言われたタスクを黙々とこなすのではなく、仲間とともに働くことを楽しむ感覚に富んでいます。
仲間と空間を共有しチームワークを育むことに注力した、メンバーシップ型の働き方の利点を生かしたオフィスといえるでしょう。

まとめ

一旦は定着したかに思えた在宅ワークですが、2021年10月、5度目の緊急事態宣言が明けると電車は再び混雑し、出社回帰の動きが見て取れました。
ニューノーマルな働き方は一過性の流行なのか、それとも働き方を根本的に変革するための契機となるのか今後の動向を注視する必要がありそうです。