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テレワークとは?導入前に確認したいメリット デメリット

テレワークとは?導入前に確認したいメリット デメリット

在宅勤務に代表されるオフィスに依存しない働き方は、以前に比べて身近な存在となりつつあります。
このような働き方は総じてテレワークと呼ばれています。
テレワークの特徴と導入にあたって確認しておくべきポイントを一緒に見ていきましょう。

テレワークとは?

多くの人がテレワークと聞いて最初に思い浮かべるのは、在宅勤務かもしれません。
日本語のテレワークの語源は英語のteleworkですが、英語圏でteleworkは在宅勤務を指します。
しかしながら、日本語のテレワークはもっと広義な言葉です。

厚生労働省が運営しているテレワーク総合ポータルサイトでは、テレワークについて下記のように定義されています。

テレワークとは「情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)を活用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」のこと。Tel(離れて)とWork(仕事)を組み合わせた造語です。

要するに本拠地のオフィスから離れた場所で、ICTをつかって仕事をすることです。

引用:テレワーク総合ポータルサイト

テレワークは働く場所に焦点を当てると、主に下記の5つの形態に分類することができます。

・ワーケーション
・モバイルワーク
・サテライトワーク
・コワーキング
・在宅勤務

ワーケーションとはワークとバケーションを合わせた言葉であり、休暇先から働くことを指します。
インターネットにアクセスすることができれば、ビーチや山など都会から離れた場所でも仕事をすることができるようになりました。

モバイルワークは、出張や通勤などの移動中や、訪問と訪問の合間にカフェなどを活用して働くことです。
新幹線を含めた公共交通機関や、大手カフェチェーンなどを中心に街中のWi-Fiの整備が進んでいます。
乗り物の中や、ちょっとした待ち時間を利用して、効率よく仕事をしている姿をよく見かけるようになりました。

サテライトワークは企業が用意したサテライトオフィスに勤務することです。
感染症の拡大を受け働き方を見直した結果、今まで以上に多くの企業がサテライトオフィスを設置するようになりました。
感染症予防はもとより、家では働きにくいと感じる人のニーズを満たす解決策となりつつあります。

コワーキングはコワーキングスペースなどのシェアオフィスを活用した働き方です。
フリーランサーを中心に活用されてきたコワーキングスペースですが、企業に勤めている人も知識や人脈を広げるために積極的に活用する事例が増えています。

在宅勤務は、皆さんもご存じの通り、自宅で働くことです。
会社で働くよりも集中できる、効率よく働けるなど良い影響が報告されています。
ところが一方では、働く場所としての環境整備がされていないため、コミュニケーションに問題が起きたり、帰属意識の低下などチームワークという面において悪影響があることもわかってきています。

そしてもう一つ、在宅勤務と同様にリモートワークという言葉も頻繁に耳にするようになりました。
それではリモートワークと在宅勤務にはどのような違いがあるのでしょうか。

・リモートワークと在宅勤務の違いとは?

リモートワークと在宅勤務の大きな違いは、リモートワークという言葉は自宅以外の場所で働くことも意味として含んでいる点です。
日本では一般的に、リモートワークはテレワークとほぼ同義の言葉として扱われており、オフィス以外の場所、もしくはオフィスから離れている(remote)場所で働くことを指します。

しかし、厚生労働省や総務省などの政府機関などではオフィス以外で働く働き方はテレワークという呼称で統一されています。
これには、英語圏の影響があるかもしれません。なぜならば、アメリカでremote workといえば、基本的に遠隔地に住んでいる従業員がほぼ出社することなく働くことを指し、teleworkとは必要に応じてオフィスに出社して働く働き方を指すからです。

確かに後者の方が日本語のイメージに近いのかもしれません。

テレワークのメリットとデメリット

昨今のビジネスを取り巻く環境の変化を受け、様々な企業がテレワークを標準的に導入しようと検討しています。
テレワークを活用している企業はどのような点に魅力を感じているのでしょうか。
また、企業や職場環境に悪影響を及ぼすことはないのでしょうか。

・企業のメリット

総務省の調査(平成29年から令和元年)によると、調査に参加した企業は多くの場合、働く環境の改善を目的にテレワークを実施しています。
テレワーク導入後、その目的に対し「ある程度効果があった」と回答している企業は6割近くに達しています。
また、働く環境の改善は、離職率や採用率と密接に関わっていることが明らかになっており、企業側のメリットとして挙げることができます。

出典:総務省 令和元年通信利用動向調査報告書(企業編)
出典:総務省 令和元年通信利用動向調査報告書(企業編)

ー離職率

既存の働き方では時間も場所も制約があるため、子育てや介護を理由に離職を余儀なくされる従業員も多くいます。
スキルや経験値のある従業員は企業にとって大切な財産であり、退職は企業にとっては大きなダメージとなります。
しかし、多様な働き方に対応できる柔軟なテレワークシステムを設計することができれば、従業員一人一人の個別の事情に配慮することができます。

働きやすさは従業員の企業に対する愛着や、やる気に直結しています。
テレワーク導入により労働環境を改善することができるため、従業員の満足度を向上することができ、離職率を低く抑えることが可能となります。

ー採用率

企業がテレワークを制度として採用していることは、優秀な人材を集めるうえで非常に重要なポイントとなります。
テレワークを採用しているということは、企業が従業員に一定の決裁権を明け渡すことの表明となっており、従業員を信頼している証となるため、対外的にプラスのイメージをもたらします。

また、テレワークをする権利が従業員にあるということは、結婚や子育て、介護や病気など、人生に大きな変化が起きた際の人生設計を容易にします。
これにより、長く働けそうだという印象を与え、求職者の関心と信頼を得ることができます。

・社員のメリット

さらに社員のメリットとしてはテレワークは生活環境に合わせやすいという点と、自己管理能力が向上し、業務効率が上がるという点が挙げられます。

ー仕事とプライベートの両立

テレワークは時間と場所の制限のない働き方です。
上手く活用することで、家庭やその他のプライベートな問題と仕事を両立させながら働き続けることが可能になります。

調査によると、若年層の離職理由のおよそ3割が労働時間に関する事項であることがわかっています。
また、女性にとって結婚後も仕事を続けることは容易なことではないことも、データから明らかになっています。
しかし、こうした労働時間に関する問題はテレワークを活用し効率よく働くことで解決できる場合が多くあります。

また、肉体的・精神的に健康を損ねた場合、折り合いをつけながら働き続けたいと思っていても、満員電車で通勤することは最初に立ちはだかる壁となっているようです。
健康上の理由で退職を余儀なくされていた従業員が、もしテレワークを活用することができれば、キャリアをあきらめずに済むかもしれません。

ー自己管理能力の向上

テレワークをしてみると、自分で自分を律する能力が必要であることに気づくことが多いようです。
オフィスでの勤務は常に人の目があり、受動的に働いている側面が多いといわれている一方、テレワークでは上司や同僚が近くにいるわけではありません。

したがって、テレワーク時には注意してくれる上司やモチベーションを刺激してくれる同僚が周りに存在しなくても、従業員自身で、時間の管理や業務効率を上げるための工夫をすることが求められます。
その結果、テレワークに慣れてくるとセルフマネジメントスキルがアップし、オフィスでの業務も格段に効率的になったという事例が多々報告されています。

・企業のデメリット

デメリットについてはコロナ禍によりテレワーク(在宅勤務)を導入する企業が格段に増えたことで、さらに明確となりました。
厚生労働省が2020年に公表したテレワークの労務管理等に関する実態調査によると、調査に参加した企業の約5割が、テレワーク時において従業員同士のコミュニケーションに問題を抱えていると回答しています。

労働時間や勤怠、評価制度などに対する課題も、根本的にはコミュニケーションが不足することによって発生する問題といえるかもしれません。

出典:厚生労働省「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」 三菱UFJリサーチ&コンサルティング発表

ーコミュニケーションの低下

テレワーク導入に際して必要な対策を行わなかった場合、従業員は孤独や疎外感を感じるといった事例は多数報告されています。
オンラインでミーティングを頻繁にしていても、対面の時と比較するとちょっとした表情やしぐさが読み取りづらいのが現状です。
言葉以外でのコミュニケーションが不足すると、チーム内、ひいては組織全体のパフォーマンスの低下につながります。

ー評価制度

テレワークを導入したどの企業にとっても、従業員のパフォーマンスをどのように評価するのかは大きな課題となっています。
上記のグラフにもあるように、テレワークは管理者にとって実際の労働時間および勤務状況や業務の進捗等を客観的に把握しづらい働き方です。

数字や成果物で判断する以外に、目標管理制度などプロセスを評価する制度を導入することも必要となります。
また、統一された評価基準を設け、不公平感を出さないようにすることが重要となります。

テレワークは職種にあった評価制度と一貫した基準を同時に設けなければ、従業員のモチベーションや帰属意識を下げる要因となります。

・社員のデメリット

従業員もテレワークを実際に活用したことによって気づきを得られているようです。
同調査の中で、従業員にとってもコミュニケーションは大きな課題となっています。
また、作業環境に関する項目も課題として挙げられています。

出典:厚生労働省「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」 三菱UFJリサーチ&コンサルティング発表

ー業務効率の低下

上記のデータからも明らかなように、調査に参加した5割以上の従業員が上司だけにとどまらず、同僚や部下とコミュニケーションが取りにくいと回答しています。
また、2割が生産性や効率性の低下につながっているとも回答しており、コミュニケーションの取りづらさが業務効率や成果物の質を低下させる可能性がありそうです。

ーメリハリがつかない

約3割が仕事とプライベートの切り分けが難しいと答えるなど、自己管理の難しさを挙げています。
1割程度ではありますが、オフィスで働くよりも長時間労働になりやすいと回答しており、通勤というクールダウンの時間がない分、一部の従業員の中にはテレワーク自体が負担となっている可能性もあります。

テレワーク導入前に準備すること

必要な事前準備として、テレワークを既に導入している他社事例のリサーチや、テレワークを推進するための社内体制を構築しておくことは当然必須です。
その他にも全社への意識共有やルール作り等やるべきことは様々ありますが、ここでは見過ごしがちなポイントについて触れていきます。

・目的の明確化

なぜテレワークを導入するのか、何を優先事項とするのかを明確にする必要があります。
なぜなら、前段で述べたようにテレワークにはデメリットもつきものだからです。
そのためにはまず、オフィスで起こっている問題を把握し、テレワーク導入でどの課題を解決できるのか、既存の働き方の何を改善したいのかを検討する必要があります。

・起こりうる課題の把握

目的を設定することができたら、テレワーク導入によって発生する可能性のある問題を事前にチェックすることも欠かせません。
ここで大切になってくるのは、問題点を洗い出すことができたら、企業の特性と照らし合わせ、絶対に発生させてはならない事案数点に絞り込むことです。
テレワーク導入がスムーズになるのと同時に、後で重要となってくるテレワーク運用の評価がしやすくなります。

テレワーク導入のためのオフィス

テレワークを導入するにあたり、ソフト面で対応しなければならないことは多岐に渡ります。
また、テレワークを定着させることを想定し、物理的にオフィスの環境も整えていくことが重要です。

・テレワーク導入の手順

目的の把握と課題の想定をすることができたら、次は具体的なプロセスへと移行していきます。

ールール作り

想定される課題を回避する為のルール作りは欠かせません。
テレワークを特定の職種または業務内容のみに適応するのか、時間で区切るのか等、実施範囲を決定しなければなりません。
既存の人事労務管理制度や就業規則がテレワークを想定して策定されていない場合は見直しをする必要があります。
また、新しくできたルールを周知するために従業員へのテレワークに関する研修を実施した方がよい場合もあります。

オフィスレイアウト自体についてもテレワークの実施率に合わせ、固定席の運用ルールを見直し、出社時に従業員同士のコミュニケーションを充実させる家具を配置する等、補完的な工夫も必要となるかもしれません。

ーICT環境の整備

従業員全員が平等にテレワーク制度を活用するためには、インフラの整備が重要となります。
テレワーク時も円滑に業務を遂行できるよう、利用するネットワークやシステム、端末などの最適化を図り、労務管理ソフトやWeb会議システムなどのコミュニケーションツールを充実させなければなりません。

オフィスにはテレワーク中の従業員とのコミュニケーションを円滑にするために、web会議用のブースや会議スペースを設ける必要があります。

ーセキュリティの強化

テレワーク時には、企業の資産である情報をオフィス以外で扱うことになるため、セキュリティ対策の徹底が大切です。

セキュリティ対策は、技術的対策(ウイルス対策ソフト、パスワードの設定等)、人的対策(情報管理の教育と徹底)、物理的対策(ペーパレス化、端末の施錠管理)の3つに分類されます。

物理的対策についてはオフィスのレイアウトに関わってくる事項です。
ペーパレス化に伴って空いた書庫スペースを、端末の管理スペースにするなど変更が必要となります。

・導入後の評価と改善

テレワーク導入後の指標に基づいた評価とブラッシュアップは、他のプロセスと同様、非常に重要です。
どのようなテレワーク成功事例も、最初からうまくいった訳ではありません。
頻繁な運用状況に対するチェックと、従業員からの不満や不安を一つずつ解決していく長期的なアプローチが成功の秘訣といえます。

テレワーク導入に成功した企業・オフィスの事例

それでは、上記で述べたポイントを具体的な事例を見ながら確認してみましょう。

・サイボウズ株式会社

出典:サイボウズ株式会社

テレワークの先駆者として有名なサイボウズ株式会社、キントーンなどを手掛けるソフトウエア開発企業です。
テレワーク導入歴としては10年以上となり、同社が運営するテレワークに関する情報公開サイトには試験導入し始めたのが2010年8月とあります。

まず、試験導入開始の前にテレワーク導入の目的と前提条件(問題の抽出)を設定しています。
前提条件として「業務効率を低下させない」ことが挙げられており、下記の5項目と紐づけられています。

・成果物の品質低下
・周囲のモラール低下
・コミュニケーションコスト増加
・時間、働き方の管理コスト増加
・情報漏えいリスクの増加

目的とゴールを設定することにより、そのあとの評価をスムーズに行うことができ、その評価結果をもとに的を得たルールを決めることができます。

また、規則などのソフト面と同時に全ての従業員が平等にテレワークできるようにインフラや設備といったハード面を充実させるべく、各部署と協力していることも大切なポイントです。

一番の障壁はテレワーク時における人事評価制度に対する不満や不安だったようです。
その都度テレワーク制度を見直し、時には「ウルトラワーク」といった大胆な制度を設けながらアップデートを重ねています。
こうした見直しの過程の中で制度自体も洗練されていきますが、制度を利用する側の従業員も自分の働き方を最適化していくことができるでしょう。

最終的には従業員一人一人が、自分が最大限にパフォーマンスを発揮できる方法を自分で編み出し、自分でコントロールするという非常に自律的なテレワークの形にたどり着いたことがわかります。

また、これだけテレワークを推し進めているサイボウズですが、オフィスも「働きやすい場所の1つ」としてとらえている所が印象的です。

サイボウズ社がテレワークを企業文化として定着させ、有効に活用できるようになった背景には、従業員の働き方をルールに当てはめるのではなく、トライ&エラーを重ねながらも、従業員一人一人の最も効率の上がる働き方を基にルールを決めることができたからではないでしょうか。

まとめ

テレワーク導入によって働く環境や働き方を改善するには、客観的に評価できる体制づくりと、能動的にテレワーク制度を見直し、実践していくことが欠かせません。
企業風土に合った独自の制度を構築することができれば、持続可能な企業、働き方を実現することができるのではないでしょうか。